昨今、文字の書けない子にキーボードを使って入力を薦めたり、計算が苦手なら電卓を使うことを許可するような特別支援がありますが、まだまだ出来ることがありますので考えてみました。
ツクガクでITを使ってどんなことをしているかということと、さらにどんなことができるかということを述べていきます。
教科書のテキスト化と読み上げ
定番ですが、つくば高等学院では以前は、教科書をPDF形式に変換し文字を読むのが苦手な生徒に貸していました。PDFに変換するときにテキスト化もおこないます。テキスト化されたPDF形式の教科書の利点は必要な部分をパソコンを通して合成音声ソフトで読み上げたり、PDFを読むためのソフトウェアについているテキスト検索機能を使って知りたい情報を簡単に検索できるようになることです。
これにより、文字を読むのが苦手な読字障害の生徒は飛躍的に課題をこなすスピードが増した生徒もいました。

最近はAccessReadingに依頼し、テキスト化された教科書を提供していただいています。
これまでPDF化はOCRの性能の問題もあり、テキスト化時のミスにより日本語とは思えないような失敗もありましたが、ミスは減りました。
しかし、まだ、生徒によっては解決されないような課題も存在しています。
音声は文字で読み上げることに比べるとゆっくりのため、眠くなってしまうようなこともありますし、音声合成もまた聞き取りにくくはないのですが聞きにくいような場面もあります。
キーボードを使っての入力
文字を書くのが苦手かどうかにかかわらず、生徒は必要な場合を除いて主にキーボードを使っての入力を薦めています。
ガラケーの時代もスマホの時代も、私の経験上ではありますが一般的な学校以外の場でパソコンを使わない中高生の多くは、キーボードの入力は得意と言えず、入力の遅い生徒が多く感じています。
文字を書くのが苦手な書字障害の生徒でも、キーボードを使ってパソコンやタブレットなどに入力することは問題なく可能です。

しかし、決して万能でだれも可能というわけではなく、入力の仕方、キー操作がなかなか覚えらえれない生徒も珍しくありません。
結果的には長い期間の反復練習が必要になることもあります。
キーボードを薦めるような支援が多いですが、キーボードは万能なものではありませんし、どうしてもできなければ音声入力や画面の画像から文字をOCR変換するような手順も考えなければなりません。
もしかしたら、キーボードの使い方を考えたり、キーボードにこだわらず入力の方法を考える必要があるかもしれません。
キーボードがすべてではない
キーボードの入力は知ってのとおり、ローマ字入力だけではなくひらがなを直接入力する機能も持ち合わせています。

ローマ字入力を覚えればローマ字が読めるのでスポーツ観戦も楽しさが増すという子にあったことがありますが、本人の特性に合わせてキーボードには種類もあるので入力の方法をいくつか考えてみるのも良いと思います。
一般的に知られるqwertyキーボード
ローマ字入力→ローマ字が覚えられる
ひらがな入力→一般的なキーボードが使える。ローマ字と違い1文字で入力できるため覚えてしまえば早いが、50個の配列を覚えるには時間がかかる。
50音順配列型キーボード
ひらがなが50音順に並んでいて、キーを探しやすい。
キーボードが苦手なら
キーボードにこだわらず
スマホやタブレットを使って、あるいはタッチパネルから
フリック入力→キーが少なければできる
音声入力
一般的に普及しているパソコンやタブレット、スマホなら音声入力は可能です。
パソコンではマイクが付いていない場合は別途購入が必要になりますが、数百円から市販されています。

スマホ、タブレットならマイクが付いているものがほとんどです。スマホなら100%ついていますね(;^_^A
OSにも音声認識機能はついていますし、もしなくても文字入力のアプリにもついています。
文字はかけるがどうしてもキーボードが苦手
ITは使わなくてもいいという時代でもなくなってきました。スマホ、タブレットあるいはパソコンならペンタブレット、タッチパネルを活用して手書き入力をすることも考えられます。

分かっていただきたいのは、書けないしキーボードも使えないしどうしようもないということではなく、いやでも無理やりやらせるのではなく方法を考える余地はあるということです。
計算が苦手
学習障害などで計算が苦手なら、電卓機能を使うことができます。パソコンでもタブレットやスマホにも、電卓機能はあります。
スマホ、タブレットについては普通の四則演算ならコンシェルジュに話しかければ計算してくれます。
生徒「5かける5はいくつ」
コンシェルジュ「5×5は25です」という具合に返してくれます。
文字でも表示されるので聞き逃しても安心です。

問題としては学校教育の中で、掛け算割り算くらいは暗記しておかないと・・と教えられているということだと思いますが、どんなに苦手でも手計算をしようとします。
練習にもなるし悪いことではないのですが、そんなときのための計算機です。
遠慮なく使いましょう。やらなくなったら終わりですが、反復すると覚えてしまうこともあります。
計算を本来の視点で
日本では掛け算、割り算を暗記する風潮がありますが、方法にこだわる必要はなく、8×8が8を8回足すことと本質を理解しておけばよいのではないでしょうか。
また81÷9は81の中に9がいくつ入っているか、80÷9は9がいくつ入っていて、いくつ余るかそんな風に考えても全く問題ありません。
むしろ、そう考えさせることで、前の週までおぼつかない割り算だったはずがさらっと理解し暗算で、3ケタと2ケタの割り算などできてしまう子もみてきました。
計算ができないから方程式が解けない子ばかりではなく、理屈が分かっても計算ができない子もいます。大事なのは理屈を理解すること。
表計算ソフトを活用してグラフもかける
例え数字の概念に弱く理屈が理解できなくても、簡単な計算を電卓を使って行い大人が認めることで自信を持つこともあります。
可能性の話になってしまいますが、「それじゃだめだ!」と大人が突っぱねるのではなく、子供が「こんどは自分でやってみよう」と思えるような環境を作るのが大人の仕事です。きっと自分で出来ることを増やしたり、努力する気持ちを育てたりすることが重要なことではないでしょうか。

表計算ソフトがちゃんと使えればグラフを書くこともでき、さらには将来のためのスキルアップにもなります。ある生徒はこんな風に表計算ソフトを活用して、実際に課題に取り組んでいます。
問題文が読めていない
数学については計算問題はできても、問題が読めていないケースも珍しくありません。
語彙が少なかったり、文字から様子が想像できなかったり様々です。
語彙が少ない生徒には別の言い方で説明したり、言葉の意味を調べさせたり、図形を自分の分かり易いように書き直したりさせることが重要です。
ネット上でも語彙については意味調べはできますし、似たような問題を開設していることも珍しくありません。支援する側も全て引き受けず、ネットをうまく活用しても良いのではないでしょうか。
たぶん、支援のいらない子供でも自発的にそうしたことをしていると思います。そんなアドバイスで理解できるようになるならお安い御用ですね。
これはちょっとちがう
一方、支援の目的ではなく方程式を解いてくれるようなアプリも存在していますが、教育の上では出来ることとその過程を大事にすることは違うと思いますので、常に目的を定め使い分けは必要です。
まだまだ書き足りないこともあるので、ときどき追加します(;^_^A